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分野別実務修習 -民事裁判修習- written by 76期司法修習生 佐藤 和樹

分野別実務修習 -民事裁判修習- written by 76期司法修習生 佐藤 和樹

1 はじめに

今回は、分野別実務修習のうち、民事裁判修習についてご紹介します。

民事裁判修習は、各地の裁判所の民事部に修習生が3名前後配属され、民事裁判の実務を体験します。

配属先にもよりますが、1つの部には裁判官が3~5名程度所属しており、修習生は配属部の裁判官ごとに2週間前後の交代で、個々の裁判官が担当している事件(単独事件)を検討等することになります。合議事件については、その都度タイミングがあれば、期日などを傍聴することが多いです。

民事事件は、1つの部(1人の裁判官)に多く係属しており、その種類も多種多様です。また、事件記録の分量も大変膨大なものになり、事件記録を読む際にはなるべく早く、正確に読むことがポイントです。

そのうえで、事前に検討をした内容を期日前に裁判官に報告し、その場で意見交換を行った後、期日に臨みます。
期日後は、期日前の検討を踏まえ、再度、裁判官との意見交換を行い、その中での問答を通して、民事裁判の理解を深めるていきます。

では、具体的にどのような修習内容になるのか、以下記載します。

 

2 民事裁判修習

1.事件記録・起案

民事部では、毎週指定の曜日に期日が入っています。多くは弁論準備手続きですが、口頭弁論期日や尋問期日、和解期日などももちろんあります。

修習生は、担当裁判官の単独事件について、期日一覧表から自分が気になる事件や担当裁判官から勉強になる事件のため同席した方がいい事件を抜粋し、同席します。

選んだ事件について、修習生はまずは事件記録を読み込みます。事件記録には、当事者が提出した訴訟記録が綴られており、審理が進んでいる事件ではその分量が大変多いものもあります。

さらに、1日数件の期日に立ち会うこともありますので、事前になるべく記録の全てに目を通すことを意識しましょう(事前に記録のすべてに目を通すことができないと、裁判官との意見交換をすることができず、せっかくの問答の機会を失ってしまうことになり、勿体ないです)。

事件記録の検討を終えた後、実際に期日への立ち会いをします。期日の前後において、裁判官との意見交換を行います。

意見交換では、期日前に事件記録を読み込んだ段階での疑問点、期日後に生じた疑問点等を裁判官に投げかけ、直接裁判官が事件の見通しや争点についての考えを知ることができます。より充実した意見交換をするためには、事件記録を十分に読み込むことは勿論、前提としての実体法及び手続法の知識の理解が必要不可欠です。

特に、裁判実務では、司法試験の際にはあまり深く勉強をしていない方が多い分野(弁論準備手続き等)の理解が必須となります。

そのため、事件記録を読み込むなかで、わからないことがあった場合には、裁判官室には数多くの基本書や参考書がありますので、まずはそれらの書籍にあたり、それでもわからないことがあった場合には直接裁判官に質問をする、といった流れで質問をするとよいと思います。

なお、裁判官室には、上述したように数多くの基本書や参考書があります。実務に出た後では、裁判官がどのような書籍を参考にしているのか等を知る機会はありませんので、ぜひ、修習生の立場のうちに、裁判官が参照にしている書籍を知っておくことは重要であると感じます。

 

2.期日の立ち会い

事件記録の検討・起案の他には、期日の立ち合いがあります。

刑事事件と異なり、民事事件の期日では事前に当事者が提出した主張書面を読み上げることはなく、「陳述します」と一言述べるだけで、当該書面を陳述したことになります。そのため、一見すると味気ないとも思えますが、裁判官と代理人との細かいやり取りや書記官とのやり取り等、細部にわたり勉強になることが多くあります。

特に、尋問期日や和解期日は、民事裁判修習の醍醐味といえるでしょう。

尋問期日では、事前に当事者が提出した陳述書がベースとなりますが、陳述書には直接的には現れていない事柄や実際に尋問をした際の当事者の表情や態度等から、裁判官がどのような心証を抱いているのかを知ることができます(補充質問で裁判官が何を聞いているのか、なぜ聞いたのかを期日後に裁判官に質問をすると、特には裏話等を話してくれる方もいらっしゃるのでぜひ質問してみてください)。

和解期日では、裁判官が事件の落としどころをどこに設定しているのかを知る大変貴重な機会です。

和解期日のイメージとして、当事者に主導権があり、裁判所は当事者が和解する内容をそのまま単に受け入れるといった印象を抱かれている方もいるかもしれません。

ですが、和解期日では、裁判所も事件の円満な解決に向けて、受動的ではなく、能動的に取り組んでいます。事件の両当事者の意見を聞くことができるのは、裁判官の他に修習生だけです。裁判官がどのような思考を経たうえで、和解期日に望んでいるのか、実務に出た際にも、直結する内容ですので、民事裁判修習の際には特に注力して、取り組んでいただければと思います。

 

3 まとめ

このように、民事裁判修習は、弁護士になる方にとっては実務に直結する非常に大切な修習です。この記事をお読み頂き、少しでも民事裁判修習のイメージを持ってもらえれば幸いです。

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